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Re^3:Volume optimization of PbTiO3, PZT (in Japanese)

Posted on : June 01, 2005 (Wed) 10:01:30

by Kobayashi Kazuaki

 物質・材料研究機構の小林です。

 筆者もPbの計算は行なったことがあります。擬ポテンシャルによるものです
が、fcc構造でk点数は、89/(48-th BZ)←(8x8x8)、Scalar relativistic、
LDA関数形はWignerという条件で、平衡格子定数は2 %ほど実験値より伸び目に
出ました。本当は、LDAでは格子定数は短めに出るのですが、Pbでは伸び目に
出ました。これはおそらく筆者の扱った(作った)擬ポテンシャルに問題があ
るのだと思われます。ただ少なくとも極小は存在し、格子定数増加により全エ
ネルギーが単調に減少ということはありませんでした。

 スピン軌道相互作用によりバンド構造には多少の違いが出ますが、筆者の知
る限りこの効果が格子定数に大きな影響を与えるという状況を見聞きしたこと
はありません。

 そもそもPbTiO3(cubic perovskite構造)関連の過去の計算関連文献を見ても、
スピン軌道相互作用を考慮しないものがほとんどで、scalar relativisticの
範疇で格子定数は求まっているように思います。例えば文献、U. V. Waghmare
and K. M. Rabe, PRB55, 6161(1997)の表1。

 一つ気付いたのですが、このAkai-KKRの計算では、core(semicore)と
valenceの扱いはどうなっているのでしょう?。擬ポテンシャルの計算でもTi
の酸化物の計算では普通内殻として無視する、Tiの3s、3pを価電子として扱わ
ないと計算がうまくいかない(格子定数などが求まらない)ことがあります。
Pb(fcc)単独の計算で格子定数が出ないことも、このcore(semicore)、
valenceの扱い(どこまでを内殻とし、どこからを価電子とするか)と関係が
ないでしょうか?。
 Pbでスピン軌道相互作用を入れると格子定数に極小が出て、この条件で
PbTiO3(PZT?)で計算すると駄目というのも、化合物にすると通常は必要でない
内殻の状態が、化合物中の他の元素の電子状態との絡みで物性に影響を及ぼす
ためではないかと思われます。ただ、前述のようにPbはスピン軌道相互作用な
しでも格子定数はちゃんと計算すれば求まると思われ(Pbは、5dを価電子とし
て扱っていますでしょうか?)、同様にPbTiO3などもscalar relativisticで
格子定数は求まり、スピン軌道相互作用の影響はほとんど格子構造に対しては
ないと思われます。

 あとは間違った対称性で計算していると変な結果を返すことがありますが、
これは可能性は低いでしょう。
 過去の文献をざっと見ただけで的はずれ、勘違いもあるかもしれませんが、
この構造は安定性や磁気構造でいろいろ議論があるようで、割と計算条件に
敏感で、微妙な系のように思えます。その意味ではちょっとした条件設定の
間違いなどが強く結果に影響しているのかもしれません。場合によっては、
本家本元である赤井先生(赤井研究室)のところに直接ご相談されてみるのも
一手かと思います。

 ”MT球の半径”の格子定数への影響は、筆者には分かりません。

 以上、的外れな指摘だった場合ご容赦下さい。何かの参考になれば幸いです。

(---@---は変なメイル対策)