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Re:Why electrons are in vacancy? (in Japanese)

Posted on : September 30, 2002 (Mon) 00:03:20

by Takao kotani

>入力ファイルでZ=0とし、原子空孔を想定した計算の出力で、
>空孔にもいくらかの電子が存在しており感覚的に腑に落ちません。
>そもそも空孔は計算の中でどのように取り扱われているのでしょうか?
>
>この疑問は、LiCoO2のLi欠損を想定したLi1-xCoO2の計算で、Oの電子数が8未満になるなど、
>各原子の電子数が???な状態になったことから生じました。欠損のないLiCoO2に対してはリーズナブル
>な結果を得ました。

岡村様、

LiCoO2でLiサイトに,たとえば,95%Liをいれて,5%Z=0のempty sphereを入れた計算をされたんですね?
このときのLiサイトのMT球には,それらの確率で,Liまたは,empty sphereが入ることになるわけです.
計算内部では,empty sphereが入ったときの
「今着目しているLiサイトにのみ原子が欠落している.(原子核がない)」
という不純物的な状況を考慮して解いていることになります.
たとえ,原子核がその位置になくても,いくらかは他の原子に属する原子軌道の裾野に
対応する電子が存在しているわけです.

また,酸素のサイトの全電子数が8以下になるとのことですが、それは大いにありえることです.
「イオンとしてOは-2で,電子数が8より多いはずだ!」ということではないかと思いますが、
それはちがいます.標準出力を見てもらえばわかるように,自動では、
実はかなり小さいMT半径を選んでいるはずです(と思います).で,そのMT内の電子数を
カウントしてるわけです.
電子状態計算で用いられるMT半径の概念は,イオン半径の概念とは全く違います.

で,とにかく,かなりの電子数はinterstitial regionにあることになります.

ホントのところは,MT半径に計算結果が,あまり依存しないのが望ましいわけです.
もちろん,できるだけ最適なものを選ぶべきです.で,一般的には,
「MT半径内の電子数ができるだけ電荷的に中性になるように」選ぶのがよい
とされています.要はMT potentialモデル(interstitial regionでフラット)が
できるだけ上手く成り立つような半径比の取り方が理想的なわけです.
まあ,実際これで結構うまくいくそうです.
が,いまのところAkaiKKRの現バージョンの自動設定では必ずしもそのようにはなっていないです.
そのうち,組み込むことになると思います.まあ,いまの自動設定値でも
それほど悪くないんだと思います.

他の例では,たとえば,MnOを計算するのにOのsphereの大きさは
Mnよりかなり小さく取ったりします.

AkaiKKRでは,Muffin-tin potentialを仮定しています.
(あるいは,asaのオプション(interstitialがない)も選べますけど).
Interstitialではフラットなポテンシャルです.
で,empty sphereは,
(1)そういう欠損のある問題をCPAで解く場合,
あるいは,
(2)異方性が大きくてMTポテンシャルをなんとか(まあ完全でないまでも)補正して
やりたいとき格子間隙にempty sphereを入れる.そうするとその内部のポテンシャルは
 Interstitialの値からずれることができる---ポテンシャルの記述の自由度が高くなるので
 よりよい解が期待できる.
で,使われます.

なんか的をはずした答えになっているかもしれません...

小谷