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Re^3:Why electrons are in vacancy? (in Japanese)

Posted on : September 30, 2002 (Mon) 16:18:43

by takao kotani

>スピン分極の計算出力で、upとdownの電子数もMT内だけの電子をカウントしている
>わけですか?
>
各原子に関する出力の部分はそういうことになります.

itterationの最後に出力される
itr= 40 neu 0.0000 chr,spn 8.8000 1.7584 intc,ints 0.9642 -0.0114
では,(interstitialもふくむ)全電荷,全磁気モーメント,
および,(interstitial部分の電荷,磁気モーメントが出力されています。


>LiCoO2の場合、出力中でCo, Li, Oのtotal chargeは、それぞれ25.3, 2.56, 9.06となり
>Coのvalence chargeはup、downともに3.66となりました。この化合物のCoはd6のlow spin
>状態ですから、さもありなんと思っています。
>
>Li siteに半分のvacancyを想定したLi0.5CoO2の場合、Co, Li, Vc, Oのtotal chargeは、
>それぞれ26.8, 3.92, 1.27, 7.57となり、Coのvalence chargeはup、downともに4.38と
>なりました。

LiとVcでの平均電子数はLiのときとあまり変わらないのに,
OサイトからCoサイトへえらく多くの(1.5個の)電子が移動していますね?
こういうことはありえるんでしょうか?
MT半径がかわってしまってないですか?---AkaiKKRだとデフォルトでは自動でMT半径を
適当に計算して与えますが、MT半径が違ってしまうと,MT内電荷数の比較もあまり意味がないですね。

>この場合、Coのスピン配置はd5とd6の中間となり、いくらか分極してほしいと思ったわけです。
これは,化学結合的な考え(Oが-2価で,Liが+1としてCoが何価か?)に基づいた議論ですね?
こういうことで議論できるかどうか,固体中でそういう描像が成り立つかどうかは場合場合によると思います。
バンドを作ることで(隣の原子と波動関数が混ざり合うことで)、そういう磁気的な分極効果は
一般には抑えられてしまいます。赤井先生(の信念)によるとLDAという近似においても,
磁気的分極などは,大きさはずれてしまうにせよ、
実験で磁気的分極があるのなら、およそLDAでも計算で出るであろう,とのことです.
(非常にTcが数Kelvinでモーメントがものすごく小さいような特殊な場合は疑問ですが。。。).

逆にいえば、バンド分散がなくて(隣とあまりつながっていなくて),
sp電子の軌道などとあまり混ざらないdバンドが存在するようであれば,
「結晶場中の孤立原子作るd軌道の描像,あるいはイオン的な描像」がよく
成り立つ場合もあるかと思います。


ちゃんと収束計算はできていますか?
一見収束したように見えてもDOSをある程度の幅で書いてみて,きちんと積分contourのなかに
うまくvalenceが収まっているかどうかの確認は必要です(赤井先生の言).

>Li+が欠損することによる電荷補償がCo3+→Co4+となる「電荷の緩和」はできないという
>意味でしょうか?
このへんは,いいかげんなマニュアルで申し訳ないです。。。
CPA計算では「まあそこそこできている」と思います。Coサイトの電子密度を計算する際には、
「Liサイトに有効散乱行列を置いて」計算することになります.
単純には,「LiサイトにランダムにLiとVcを置いたとしたときの,Coサイトでの電荷や状態密度
の結晶全体での平均」が,そこそこ計算できるだろうと思います。
でも状況によりますし,なんともいえません。


小谷